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借金の返済が苦しくなり、「毎月返しても元金がほとんど減らない」「借金を返すために別の会社から借りている」という状態になると、自己破産を考える人も少なくありません。
しかし、自己破産には「すべての財産を失う」「会社を解雇される」「家族も借金を背負う」といった強いイメージがあります。
そのため、本来は自己破産によって生活を立て直せる状況であっても、怖さや恥ずかしさから相談を先延ばしにしてしまうケースがあります。
自己破産は、借金から逃げるための裏技ではありません。
返済が事実上できなくなった人が、裁判所の手続を通じて借金や財産を整理し、経済的に再出発するために設けられている制度です。破産手続が始まっただけで借金の支払義務が自動的になくなるわけではなく、原則として裁判所から免責許可を受ける必要があります。
この記事では、自己破産の仕組み、手続き、費用、財産への影響、家族や仕事への影響、自己破産後の生活まで詳しく解説します。
※この記事は2026年8月時点の一般的な制度をもとにしています。実際の必要書類、費用、手続の進み方、残せる財産の範囲などは、事件の内容や管轄裁判所の運用によって異なる場合があります。
1.自己破産とは何か
自己破産とは、借金などの債務を支払えない状態になった人が裁判所に申し立て、一定の財産を換価して債権者に配当したうえで、残った債務について支払義務の免除を求める手続です。
ここで理解しておきたいのが、次の二つは厳密には別の手続だということです。
- 破産手続
- 免責手続
破産手続とは
破産手続では、裁判所が破産手続開始を決定し、必要に応じて破産管財人を選任します。
破産管財人は、申立人が所有している財産や借金の原因などを調査し、処分すべき財産がある場合は金銭に換え、債権者に配当します。
免責手続とは
免責手続は、破産手続後に残った借金について、法律上の支払義務を免除してもらうための手続です。
つまり、「破産手続をしたから借金が消える」のではなく、原則として免責許可決定が確定することで、対象となる借金の支払義務が免除されます。
ただし、税金や養育費など、自己破産しても支払義務が残る債務もあります。
自己破産を「借金がすべてゼロになる制度」とだけ理解するのは正確ではありません。
2.どのような状態なら自己破産を検討するのか
自己破産について調べる人が特に気になるのが、「借金がいくらあれば自己破産できるのか」という点です。
結論からいえば、自己破産には「借金が300万円以上ならできる」といった一律の金額基準があるわけではありません。
重要なのは借金の総額だけではなく、現在の収入、生活費、財産、家族構成、健康状態、今後の収入見込みなどを考慮して、継続的に返済できる状態かどうかです。
同じ300万円の借金でも、年収が高く十分に返済できる人と、失業して収入がほとんどない人では状況が大きく異なります。
自己破産を検討する代表的な状態
次のような状況が続いている場合は、早めに専門家へ相談したほうがよい可能性があります。
- 借金を返すために別の会社から借りている
- 毎月返済しても元金がほとんど減らない
- 返済すると家賃や食費を払えない
- 複数社の返済日を管理できなくなっている
- クレジットカードの現金化を考えている
- 携帯電話料金や公共料金まで滞納している
- 税金や社会保険料も支払えなくなっている
- 失業や病気によって収入回復の見込みが立たない
- 家族や知人から借りなければ生活できない
- 借金の督促が怖くて郵便物や電話を無視している
法テラスも、支払い可能な金額がない、またはほとんどない場合には、自己破産の申立てが選択肢になると案内しています。
自己破産を検討すべきかどうかは、借金額の大きさよりも「今後も返済を続けられる現実的な見込みがあるか」で判断する必要があります。
3.自己破産以外の債務整理との違い
借金を整理する方法は、自己破産だけではありません。
代表的な方法として、任意整理、個人再生、特定調停、自己破産があります。
| 手続き | 主な特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 任意整理 | 債権者と交渉し、 将来利息や返済方法の見直しを目指す | 元金を数年かけて返済できる |
| 個人再生 | 裁判所を利用して借金を減額し、 原則として分割返済する | 安定した収入があり、住宅を残したい |
| 特定調停 | 簡易裁判所で債権者と返済方法を調整する | 自分で手続を進めたい |
| 自己破産 | 免責によって対象債務の支払義務の免除を求める | 返済を続けることが現実的に困難 |
任意整理が向いている人
借金の元金を3年から5年程度で返せる収入がある場合は、任意整理を検討できる可能性があります。
任意整理では、一般的に債権者と交渉し、今後発生する利息のカットや分割払いを目指します。
ただし、任意整理は元金そのものが大幅に減るとは限りません。収入に対して元金が大きすぎる場合、無理な返済計画を立てても、途中で払えなくなる可能性があります。
個人再生が向いている人
個人再生は、裁判所の手続によって借金を一定の基準まで減額し、原則として分割返済する制度です。
住宅ローン特則の条件を満たせば、住宅ローンを返済しながら、ほかの借金を整理できる可能性があります。ただし、住宅ローンそのものがほかの借金と同じように減額されるわけではありません。
自己破産が向いている人
現在の収入から生活費を差し引くと返済に回せるお金がほとんどない場合や、借金を減額しても返済できない場合は、自己破産が現実的な選択肢になることがあります。
大切なのは、「自己破産だけは避けたい」という気持ちだけで任意整理を選ばないことです。
返済能力に合わない方法を選ぶと、数年間返済した後に結局自己破産することになり、その間の生活がさらに苦しくなる可能性があります。
4.自己破産の手続きの流れ
自己破産の手続きは、一般的に次のような流れで進みます。
1.弁護士や法テラスなどに相談する
まず、現在の借金、収入、支出、財産の状況を整理します。
相談する際は、借入先、残高、返済額、督促状、給与明細、預金通帳などをできる範囲で準備すると、状況を把握しやすくなります。
2.債権者と借金の状況を調査する
弁護士に依頼した場合は、債権者へ受任通知を送り、取引履歴などを取り寄せます。
貸金業者が弁護士などから受任通知を受けた場合、正当な理由なく本人へ直接取り立てることは原則として制限されます。
ただし、税金、個人からの借金、家賃、住宅ローン、公共料金などは、貸金業者と同じ扱いにならない場合があります。
3.申立書類を作成する
自己破産では、単に借金の一覧を提出するだけではありません。
収入、支出、財産、借金の原因、返済状況などを詳しく申告する必要があります。
4.地方裁判所へ申し立てる
原則として、申立人の住所地を管轄する地方裁判所へ破産・免責を申し立てます。
裁判所は、提出された書類や申立人の状況を確認し、破産手続を開始するか判断します。
5.同時廃止または管財事件に振り分けられる
処分すべき財産や詳しい調査の必要性がないと判断されれば、同時廃止になる可能性があります。
財産がある場合や、借金の原因などについて調査が必要な場合は、破産管財人が選任される管財事件になります。
6.免責について審査される
裁判所は、免責不許可事由がないか、申立人が誠実に手続へ協力しているかなどを確認します。
7.免責許可決定が出る
裁判所が免責を認めると免責許可決定が出されます。
決定が確定すれば、非免責債権を除き、対象となる債務の支払義務が免除されます。
手続の期間は事件の内容、財産の有無、書類の準備状況、裁判所の運用などによって異なります。
5.同時廃止と管財事件の違い
個人の自己破産は、大きく分けると同時廃止と管財事件があります。
同時廃止とは
申立人に債権者へ配当できるほどの財産がなく、破産管財人による詳しい調査も必要ないと判断された場合に行われる手続です。
破産手続開始と同時に破産手続が終了し、その後は免責についての手続が進められます。
同時廃止は、管財事件と比べると手続が比較的簡略で、裁判所へ納める費用も低くなる傾向があります。
管財事件とは
管財事件では、裁判所が破産管財人を選任します。
破産管財人は、主に次のような調査や業務を行います。
- 所有している財産の調査
- 預金や保険などの確認
- 不動産や自動車の価値の確認
- 財産の換価と債権者への配当
- 借金が増えた経緯の調査
- 一部の債権者だけに返済していないかの確認
- 財産を隠したり譲渡したりしていないかの確認
- 免責を認めることが相当かの調査
一定の財産がある場合だけでなく、浪費やギャンブル、カードの現金化、事業上の借金、不自然な財産移動などがある場合も、管財事件になる可能性があります。
財産がほとんどない場合でも、免責不許可事由の存在が疑われ、詳しい調査が必要であれば破産管財人が選任されることがあります。
なお、同時廃止になるか管財事件になるかを、申立人が自由に選べるわけではありません。
最終的には、提出された書類や事件の内容をもとに裁判所が判断します。
6.自己破産に必要な書類と費用
自己破産では、借金の状況だけでなく、生活全体を確認できる資料の提出が求められます。
主な申立書類
一般的には次のような書類を準備します。
- 破産・免責申立書
- 債権者一覧表
- 財産目録
- 家計収支表
- 借金が増えた経緯を説明する陳述書
- 滞納している税金などの一覧
- 住民票
- 給与明細
- 源泉徴収票
- 課税証明書
- 預金通帳の写し
- 保険証券
- 保険の解約返戻金証明書
- 自動車に関する資料
- 不動産登記事項証明書
- 不動産の査定資料
- 退職金見込額証明書
- 年金や各種手当の受給資料
- 賃貸借契約書
- 借入れやクレジット利用の明細
裁判所が公開している申立書式にも、債権者一覧表、財産目録、家計収支表などが含まれています。
必要書類は管轄裁判所や個人の状況によって異なります。
個人事業主、会社経営者、不動産所有者、離婚歴がある人、相続を受けた人などは、追加資料が必要になる可能性があります。
裁判所へ納める費用
裁判所へ納める費用には、一般的に次のものがあります。
- 申立手数料
- 郵便切手代
- 官報公告費用
- 管財事件の予納金
同時廃止事件では、裁判所に納める費用は比較的少額ですが、管財事件では破産管財人の報酬などに充てる予納金が必要になります。
法テラスの案内では、同時廃止事件の場合は裁判所に納める実費などとして3万円弱程度、管財事件では資産や事件内容に応じて数十万円以上の予納金が必要になる場合があるとされています。
ただし、具体的な金額は裁判所によって異なります。
弁護士費用
弁護士へ依頼する場合は、裁判所へ納める費用とは別に弁護士費用が必要です。
法テラスが示している代理援助の目安では、自己破産事件の依頼時費用は債権者数などによって異なり、債権者1社から10社の場合の合計目安は15万5,000円とされています。ただし、実際の費用は事件の内容や難易度によって変わります。
収入や資産が一定基準以下などの条件を満たせば、法テラスの民事法律扶助を利用し、弁護士費用などを立て替えてもらえる場合があります。立替金は原則として分割で返済します。
「お金がないから自己破産できない」と諦める前に、法テラスや弁護士会などへ相談することが重要です。
7.自己破産すると財産はどこまで失うのか
自己破産には、「家の中にある物をすべて持っていかれる」というイメージがあります。
しかし、自己破産をしたからといって、生活に必要なすべての物を失うわけではありません。
法律上、破産後の生活に必要な一定の財産は、自由財産として手元に残せる場合があります。
原則として残せる可能性があるもの
一般的には、次のような物は生活に必要な財産として残せる可能性があります。
- 通常の衣類
- 寝具
- 冷蔵庫
- 洗濯機
- 一般的なテレビ
- 調理器具
- 家具
- 仕事や生活に必要な道具
- 一定範囲の現金
- 破産手続開始後に得た給与
現金については、法テラスの案内では、破産財団に属する現金のうち99万円までが自由財産になると説明されています。
ただし、「預金も必ず99万円まで残せる」という意味ではありません。
現金、預金、保険、自動車などは、財産の種類や評価額によって扱いが異なるため注意が必要です。
持ち家はどうなるのか
本人名義の持ち家に価値がある場合は、原則として処分の対象になる可能性が高くなります。
住宅ローンが残っている場合も、住宅ローンの支払いを止めれば、最終的に売却や競売によって住宅を失う可能性があります。
住宅を残したい場合は、自己破産ではなく、住宅ローン特則を利用した個人再生を検討できるケースがあります。
自動車はどうなるのか
自動車を所有しているからといって、必ず処分されるとは限りません。
自動車の時価、ローンの有無、所有権が誰にあるか、生活や仕事にどの程度必要か、裁判所の運用などによって判断が変わります。
ローンが残っていて、信販会社などに所有権が留保されている場合は、契約に基づいて車を引き揚げられる可能性があります。
生命保険はどうなるのか
生命保険に解約返戻金がある場合、その解約返戻金が財産として評価される可能性があります。
掛け捨て型などで解約返戻金がほとんどない場合は、解約せずに継続できる可能性もあります。
退職金はどうなるのか
まだ退職していなくても、将来受け取る予定の退職金の一部が財産として評価される場合があります。
ただし、退職時期や支給の確実性によって評価方法が異なります。
財産の扱いについては自己判断せず、預金、不動産、車、保険、退職金などをすべて正直に申告する必要があります。
8.家族・仕事・住居への影響
自己破産を検討するとき、多くの人が借金そのもの以上に不安を感じるのが家族や仕事への影響です。
家族も借金を返す必要があるのか
借金が本人名義であり、家族が保証人や連帯保証人になっていなければ、家族に当然に返済義務が移るわけではありません。
ただし、家族が保証人や連帯保証人になっている場合は別です。
本人が自己破産して免責されても、保証人の支払義務まで免除されるわけではありません。債権者は保証人に対して請求できます。
家族が保証人になっている借金がある場合は、自己破産を申し立てる前に、家族への影響を慎重に確認する必要があります。
家族名義の財産はどうなるのか
家族が自分の収入で購入した家族名義の財産は、原則として本人の破産財産ではありません。
しかし、実際には本人のお金で購入した財産を家族名義にしている場合や、自己破産直前に本人名義の財産を家族へ移した場合は、詳しい調査の対象になります。
自己破産前に自動車や預金、不動産などの名義を家族へ変更すると、財産隠しと判断される危険があります。
会社に知られるのか
自己破産すると氏名や住所などが官報に掲載されます。
ただし、一般の会社が日常的に官報の破産情報を確認しているとは限りません。
給与差押えを受けていた場合、会社から借金をしている場合、会社が保証人になっている場合、職業上の資格制限に関係する場合などは、会社に知られる可能性が高くなります。
「絶対に会社に知られない」とまでは断定できません。
自己破産を理由に解雇されるのか
自己破産をしたという事実だけで、すべての職業を失うわけではありません。
ただし、破産手続中は、一定の資格や職業について法律上の制限を受ける場合があります。
制限の対象になり得る職業には、警備員、生命保険募集人、一定の士業などがあります。
制限を受ける期間は一般的に破産手続中で、免責確定などによって資格制限が解消される「復権」に至れば、再び就業できる可能性があります。
現在の仕事が資格制限に関係する場合は、申立て前に必ず弁護士へ確認する必要があります。
賃貸住宅から追い出されるのか
自己破産したという事実だけで、直ちに賃貸住宅から退去させられるとは限りません。
ただし、家賃を滞納している場合は、自己破産とは別に賃貸借契約を解除される可能性があります。
また、自己破産後に新しく賃貸物件を契約する場合、信販系の家賃保証会社の審査に通りにくくなる可能性があります。
9.自己破産しても支払いが残るもの
免責許可決定が確定しても、すべての支払いがなくなるわけではありません。
法律上、免責されない債権を非免責債権といいます。
主な非免責債権
代表的なものには次のような支払いがあります。
- 所得税や住民税
- 固定資産税
- 自動車税
- 国民健康保険料
- 国民年金保険料
- 罰金
- 養育費
- 婚姻費用
- 一定の損害賠償債務
- 故意に債権者一覧表へ記載しなかった一定の債務
- 一定の従業員の給料や預り金
法務省も、免責が許可された場合でも、税金、罰金、子どもの養育費などの支払義務は残ると案内しています。
特に注意したいのが、税金や社会保険料です。
消費者金融やクレジットカードの借金が免責されても、滞納している税金や国民健康保険料などは原則としてなくなりません。
自己破産後も支払いが必要になるため、市区町村や年金事務所などに相談し、分割納付や猶予が可能か確認する必要があります。
10.免責が認められない可能性がある行為
自己破産を申し立てれば、必ず免責されるとは限りません。
破産法には、免責不許可事由が定められています。
代表的な免責不許可事由
- 財産を隠す
- 財産を壊す
- 財産を不当に安く売る
- 自己破産直前に家族へ財産を譲る
- 一部の債権者だけに返済する
- ギャンブルで多額の借金を作る
- 過度な買い物や飲食で借金を作る
- クレジットカードのショッピング枠を現金化する
- 返済できないと分かりながら借金を増やす
- 裁判所へ虚偽の書類を提出する
- 債権者を意図的に申告しない
- 破産管財人の調査を妨害する
- 過去7年以内に一定の免責許可を受けている
法テラスは、財産隠し、不当に安い財産処分、ギャンブルや浪費、一部の債権者だけへの返済、虚偽の申告、カード現金化などを、免責が認められない可能性がある行為として挙げています。
ギャンブルの借金は絶対に免責されないのか
ギャンブルや浪費による借金は免責不許可事由に該当する可能性があります。
しかし、該当したからといって、必ず免責されないと決まるわけではありません。
裁判所は、借金に至った経緯、現在の反省、家計改善の状況、手続への協力姿勢など、さまざまな事情を考慮し、裁量によって免責を許可することがあります。
大切なのは、ギャンブル歴や浪費を隠さないことです。
嘘をついたり、通帳の履歴を隠したりすると、借金の原因そのものよりも、手続に対する不誠実な態度が問題になる可能性があります。
家族や知人だけに返済してはいけない
自己破産を考えている人の中には、「消費者金融は払えないが、迷惑をかけたくないから親や友人にだけ返しておこう」と考える人がいます。
しかし、支払いができない状態で特定の相手だけを優先して返済すると、偏頗弁済として問題になる可能性があります。
親、兄弟、友人、勤務先からの借金も、原則として債権者一覧表に記載しなければなりません。
11.自己破産するとクレジットカードやローンはどうなるのか
自己破産をすると、利用中のクレジットカードは原則として利用できなくなります。
また、信用情報機関に返済状況や破産に関連する情報が登録されるため、一定期間は新しいクレジットカードやローンの審査に通りにくくなります。
信用情報の登録期間
信用情報機関によって、保有する情報や登録期間は異なります。
CICではクレジット情報を契約中および契約終了後5年以内、JICCでも契約終了後5年以内を基本としています。全国銀行個人信用情報センターでは、破産手続開始決定などの官報情報を決定日から7年を超えない期間登録するとしています。
そのため、「自己破産後は必ず10年間カードを作れない」と一律にはいえません。
実際にカードやローンを利用できるかは、信用情報だけでなく、申込先の会社、収入、勤続年数、過去の取引状況などを含めて各社が判断します。
登録期間が終わったからといって、必ず審査に通るわけではありません。
デビットカードは使えるのか
銀行口座の残高から即時に代金が引き落とされるデビットカードは、一般的なクレジットカードとは仕組みが異なります。
銀行口座を利用できる状態であれば、自己破産後もデビットカードを使える可能性があります。
ただし、自己破産の対象となる銀行に借金がある場合、一時的に口座が凍結され、預金と借金を相殺される可能性があります。
給与振込口座や公共料金の引き落とし口座が借入先銀行と同じ場合は、事前に専門家へ確認したほうが安全です。
12.自己破産に関するよくある誤解
自己破産には、事実とは異なるイメージが数多くあります。
戸籍や住民票に記載される
自己破産した事実が、通常の戸籍や住民票に記載されるわけではありません。
選挙権がなくなる
自己破産をしても、選挙権がなくなるわけではありません。
銀行口座を一生作れない
自己破産しただけで、すべての銀行口座が永久に利用できなくなるわけではありません。
法テラスも、自己破産によって選挙権がなくなったり、戸籍や住民票に記載されたり、普通預金口座が一律に使えなくなったりするものではないと案内しています。
家族全員の信用情報に傷が付く
信用情報は個人ごとに管理されます。
本人が自己破産したからといって、家族の信用情報に本人の破産情報がそのまま登録されるわけではありません。
ただし、家族が保証人であった場合や、家族カード、共同ローンなどを利用している場合は影響が出る可能性があります。
一生借金ができない
信用情報の登録には期間があります。
ただし、自己破産後に再び借りられるようになったとしても、再度借金に依存しない家計を作ることが重要です。
13.自己破産を申し立てる前にしてはいけないこと
自己破産を検討し始めた後は、焦って行動すると手続を複雑にする可能性があります。
特に、次の行為は避ける必要があります。
- 家や車の名義を家族に変える
- 預金を引き出して隠す
- 高価な物を知人へ預ける
- 親や友人にだけ借金を返す
- クレジットカードで商品を買い、すぐに売る
- 新たな借金で生活費を補う
- 通帳や請求書を捨てる
- 弁護士や裁判所に借金を隠す
- 税金の滞納を放置する
- 保険を自己判断で解約する
「自己破産すると財産を取られるから、先に家族名義に変えておこう」という行為は、財産隠しと判断される危険があります。
また、親や友人からの借金を優先的に返す行為も、債権者を平等に扱う自己破産の考え方に反する可能性があります。
自分で財産を動かす前に、弁護士へ相談することが重要です。
14.自己破産後の生活をどう立て直すか
自己破産は、免責許可を受けて終わりではありません。
借金の原因を整理し、再び同じ状態にならない生活を作ることが、本当の意味での再出発になります。
家計を現金ベースに切り替える
自己破産後はクレジットカードを使いにくくなるため、現金、口座振替、デビットカードなどを中心とした生活になります。
使える金額が目に見えやすくなるため、家計を立て直す機会にもなります。
固定費を見直す
生活費を改善するうえで、食費を数百円ずつ削るよりも、毎月発生する固定費を見直すほうが効果が大きい場合があります。
具体的には次の費用です。
- 家賃
- 携帯電話料金
- インターネット料金
- 保険料
- 自動車維持費
- 動画配信サービス
- 有料アプリ
- 使用していないサブスクリプション
税金や社会保険料の支払い計画を作る
税金や国民健康保険料などは、自己破産しても残ります。
支払いが難しい場合は放置せず、市区町村の窓口などへ相談します。
滞納したまま何もしなければ、預金や給与などを差し押さえられる可能性があります。
少額でも予備費を作る
病気、家電の故障、冠婚葬祭、自動車の修理など、突然の出費が発生すると、再び借金をしたくなる可能性があります。
毎月1,000円や3,000円でもよいので、生活費とは別に緊急予備資金を積み立てることが大切です。
借金の原因に向き合う
借金の原因が収入不足だけなら、転職、副業、公的支援の利用などを考える必要があります。
ギャンブル、買い物、投げ銭、ゲーム課金などが原因なら、単なる節約だけでは再発を防げない可能性があります。
必要に応じて、依存症の相談窓口や医療機関につながることも生活再建の一部です。
15.自己破産は人生の終わりではない
自己破産は、住宅や自動車などの財産を失う可能性があり、一定期間クレジットカードやローンを利用しにくくなるなど、決して影響の小さい手続ではありません。
一方で、返済できない借金を抱えたまま、借金を返すために借金を重ね続ける生活にも大きな問題があります。
返済を優先するあまり、家賃、食費、医療費、税金、子どもの生活費まで払えなくなれば、生活そのものが崩れてしまいます。
自己破産は、借金をした人を罰するための制度ではありません。
返済が事実上できなくなった人が、裁判所の管理のもとで財産と借金を整理し、経済生活を立て直すための制度です。
もちろん、すべての人に自己破産が適しているわけではありません。
収入や借金額によっては任意整理や個人再生が適している場合もあります。過払い金、消滅時効、相続放棄など、別の制度によって解決できるケースもあります。
重要なのは、自分だけで判断しないことです。
借金問題は、時間がたつほど遅延損害金が増え、訴訟、給与差押え、預金差押えなどに発展する可能性があります。
「まだ何とかなる」と借金を重ねる前に、弁護士、司法書士、法テラス、自治体の無料法律相談などへ相談し、現在の収入で本当に返済できるのかを冷静に確認することが必要です。
まとめ
自己破産について、重要なポイントを整理すると次のようになります。
- 自己破産には破産手続と免責手続がある
- 破産手続開始だけで借金が自動的に消えるわけではない
- 借金額だけでなく返済能力によって利用の可否が判断される
- 一定の財産は処分対象になる可能性がある
- 生活に必要な家財まですべて失うわけではない
- 家族が保証人でなければ、原則として家族に返済義務は移らない
- 税金、社会保険料、養育費などは免責されない
- 財産隠しや一部の相手だけへの返済は避けなければならない
- 信用情報の影響により一定期間はローンやカードを利用しにくくなる
- 自己破産後は家計管理と生活再建が重要になる
自己破産は大きな決断ですが、「人生が終わる制度」ではありません。
返済の見込みがない借金を整理し、家賃や食費、医療費など、本来の生活を取り戻すための選択肢です。
借金によって日常生活が維持できなくなっている場合は、督促を無視したり、新たな借金で返済したりする前に、できるだけ早く専門家へ相談することが大切です。


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